2009年05月05日

皮肉と嘲笑で彼女をあざ笑っていた英国人たちの度肝を抜いた、スコットランド人女性

インターネットでのニュース記事で、たまたま4月に海外にいた私が眼にした記事がありました。

写真を見ると、正直言って申し訳ないのですが、ブサイクなおばさんの顔写真があり、そのあまりに眉毛が濃いので、男の人が性転換でも女性になったのかと思ったほどでした。

さて、YouTubeでも、たいへん話題になっていたようで、たくさん動画で紹介されていましたので、さっそく見てみました。

Britain's Got Talent−まだ知られざる英国の才ある人物をオーディションで発掘しようというTV番組で、非常に人気があるようです。

今回の公開オーディションの場所は、スコットランドのグラスゴー。

ここで、皆さん、英国といって、イギリスだけを思い浮かべるようではいけません。イギリス、スコットランド、ウェイルズ、アイルランドを総称して、Great Britan と呼ぶわけで、たとえば、イギリス人と、スコットランド人は、気質も性格もかなりちがうようです。

イギリス人のイメージは、やや陰湿で、神経質で皮肉っぽい気取ったイメージがあり、それらしいイギリス人の特徴は、Mr. Bean ( ミスター・ビーン)という世界的に有名なコメディTV番組に、まさに十分に「誇張」されてユーモラスに表現されています。

いかにもイギリス人らしいいやらしさを誇大化して強調しているので、イギリス人を知る人みなに思い当たるところや実感できるところが多く、人気を呼んでいるようです。

神経質で皮肉屋なイギリス人に比べて、一方、スコットランド人は、頑固一徹。

実は、スコットランド人とイギリス人は、あまり仲がよくありません。

街中で、地図を見ながら道に迷っているようなら、スコットランド人なら、すぐに親切に声をかけて、手助けしてあげるが、イギリス人を見てみろ、ロンドンあたりで、道に迷っている人がいても、誰も声をかけてあげる親切なイギリス人など見たことがない。われわれ、スコットランド人は、そういう冷たいイギリス人とは全然ちがうのだ、などという話は、よくスコットランド人から聞かされたものです。とにかく気質がちがうようです。

さて、話を元に戻します。

その新たな才能発掘の公開オーディションに、すでに47歳のブサイクなスコットランド人のおばさんが登場し、皮肉交じりの審査員の質問に、プロの歌手になりたい、目標はエレーン・ペイジ、などと答えたものだから、審査員は、内心、「何をいってるんだろうねえ、このおばさんは。その顔と年齢じゃ、無理に決まっているでしょ。ちょっとおかしいんじゃないの。どうせ聞いても意味がないと思うけどね。一応は聞くけどね。ひどかったら、すぐに帰ってもらいたいねぇ。」というノリと態度でしたね。

私ですら、なんだろ、このおばさんは、という感じで、見ていましたからね。

会場に集まった聴衆も、まず全員が、このブサイクなおばさんをばかにして、あざわらっているような雰囲気でした。

選択した歌の曲名は、ミュージカルでも有名な「レ・ミゼラブル」から「I Dreamed A Dream.」(「私は、夢を生きた」)。人生でひたむきに自分の夢を生きようとし、その挫折にあっても、そのことにあえて真正面から向き合って歌う、重い、むずかしい曲です。

それなりの教養の深みと人生経験がないと、歌いこなせないような深みと重みのある曲です。

ちょっとでも、へたに歌ったら、それこそ伝統的な教養を誇りにするイギリス人、ときにインテリたちからは、いっぺんに嘲笑されることでしょう。

ところが、彼女が歌いだしたら、審査員と会場の人たちの表情が、一瞬にして、驚きに変わります。

唖然として、声を失う、とは、このようなことをいうのでしょう。

あまりに意外すぎて、あっけにとられてしまうほど、見事に、そのむずかしい人生の重みあるその曲を、まさに「表現」として、歌いきってしまったのです。

私も、最初は、ぽかんとしてしまったのですが、だんだんむやみに感動してきて、最後の盛り上がりでは、涙が出てきてしまいました。

彼女をこばかにしていた審査員と聴衆全員を、一瞬にしてノックアウトしてしまったのです。

私も、人を見かけで判断してはいけない、と大いに反省しました。

しかし、これだけの大勢の好意的でない聴衆を前にしながら、聴衆の大歓声の反応にも自分を失わず、ただただ自分の歌を見事に歌いきった彼女はすごい!脱帽です。お見事としかいいようがありません。

彼女の名前は、スーザン・ボイル。スコットランドの田舎町に住んでいるのだそうです。

顕著に皮肉交じりでこばかにしていた審査員が、思わず、反省のコメントを述べて、「あなたの歌を聞けて、とても光栄でした」と言ってしまうほど、彼女は、皆の思惑を根本からひっくりかえしてしまったのです。

バカにしていた聴衆も、総立ちになって拍手を彼女に送ります。


「おまえなんか、どうせ、だめだよ。無理に決まってるよ。」

こういう思惑を、現実にひっくりかえして、相手が、全面降参するくらいの結果を、目の前に突きつけてやることほど愉快で、痛快なことはありませんね。

私も、見ていて感動し、気分がすがすがしくなってしまいました。


YouTubeを見ていない人は、日本語訳のつけたものを見つけましたから、見てみてくださいね。

英国の番組は、YouTubeの動画を、そのままこちらのブログなどのサイトに埋め込むことができない(英国とGoogleとの著作権に関する同意事項による)ので、ここをクリックして、YouTube画面から、直接ご覧ください。

でも、ここで、やり手のプロデューサーである、辛口の批判をズバズバいうサイモンという審査員のひとりは、どうも事前調査で、このような展開をうすうす予想し、計画していたようでもあります。

こういうオーディションは、いきなり本番というわけではないでしょうし、予備審査というものもありましょうから、あまりにも意外なドラマチックなケースに対する人々の反響を予想、期待して、彼がマーケティング戦略をはかっていたような部分もあります。

というのは、この番組の直後、よく編集された番組内容が、全世界にYouTubeなどを通して、いっせいに公開され、実に短期間に知らされた事実であり、あまりに手際がよすぎるからです。

ねらいはあたって、すぐに公開された番組のYouTubeの動画は、あっというまに数百万のアクセスとなり、一大事件となります。

サイモンは、すぐに、このドラマチックなデビューをした彼女のCDは全世界で数百万枚売れると、読んでいたようです。

このような表に出ないマーケティングの仕掛け人が存在するのが世の中なのだということも見抜いてくださいね。

しかしながら、自分が長年、純粋に夢見ていたことがかなった彼女の顔を、その後、くりかえし、くりかえしYouTubeで見ていたら、最初は、男性が無理に性転換した人かと思うほどだった彼女の顔が、もはやブサイクなイメージではなく、ある種の人間的なかわいらしさを感じるくらいに印象が変わってしまったのには、人間心理というものの変わりやすさを感じました。

純粋に感動すると、実は陰に売り込みの仕掛け人がいた、というと、いやな印象を受けますが、現実には、そういう人がいないと広まらないのも現実であり、彼女自身が何か、画策したわけではないので、私は、素直によろこぶことにしました。

しかし、皆さん、皆さんも、彼女のように、自分の人生で、自分をこばかにしてくる連中がいたなら、そういう連中のハナをあかしてやることを生きがいにしたいものですね。

だって、痛快で、愉快で、気分がすっきりするじゃないですか。




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この記事へのコメント
大塚先生、初めまして。
実は、今日の午前中、本屋で
”先生の治る力の再発見”を購入し、電車の中で読み始めた所、
先生のおっしゃることにいちいち納得が行き、
長年不思議に感じていた健康食品業界の広告や水や塩は飲んだ方がいいのかよくないのか等についての考え方をお示し頂き、
すっかり先生の大ファンになってしまった者です。

その足で、まだ本は1/3程度しか読んでいないのですが、
早速ブログにも伺ってしまいました!

そして、今、スーザンボイルさん、聴きました。
映像も、すばらしかったです!
うまく書けないのですが、とっても感動しました。

これからもたくさんの記事を、著作を書かれて下さいませ。

ふう
Posted by ふう at 2009年07月09日 17:57
お便りをありがとうございます。

また、素敵なブログへの感想をいただき、とてもよろこんでいます。

今、海外におります。

また、コメントを、ときどきくださいね。


大塚晃志郎
Posted by 大塚晃志郎 at 2009年07月18日 00:44