7月中はタイに滞在しておりますが、この国では、いったんは新型インフルエンザの騒動が収まったと思いきや、またテレビや新聞等のマスコミを中心に、外出のときは、かならずマスクをしろ、人ごみの中に出かけないで家にいろ、大勢人のいるところへ行くな、とか、専門家とされる人たちが、一種のかなり無茶なプロパガンダを、また繰り返し強要するようになってきました。WHO(世界保健機関)がお尻を叩いているのか、いったい誰が背後にいるのか、と思いたくなるほどに、急に再びこぞって、専門家たちが騒ぎだしています。学級閉鎖もけっこうあるようです。
ここで、逆説的に、「もしかすると、マスクをしている人のほうが、新型インフルエンザにかかりやすいかもしれない」という、一見、野蛮な仮説を立てて考えてみましょう。
あながち、これは、まったく根拠がない、とはいえないのです。
「えっ?!まさか??」と思われるかもしれませんね。
ただし、不安や心配、ウイルスヘの恐怖心にかられて、マスクをしている人、というように、限定条件がつきますが。
インフルエンザにかかる、かからない、は、その人の免疫力のはたらきしだいであることは、誰でも理解できますね。
だから、同じような条件に置かれても、かかる人もいれば、かからない人もいるわけです。
この生体の防御機構の中心ともいえる免疫力のはたらきを左右する要因のひとつは、なんでしょうか?
実は、人間の心や感情が、免疫力を作用するという、かなり明確な事実があります。
その心と免疫系のはたらきの関係を研究する分野に、精神神経免疫学( Psychoneuroimmunology )というむずかしげな名前のついた研究分野があります。略して、PNIともいいます。
ひとことでいうならば、心をつかさどる脳神経を中心とする神経系と、ホルモンなどの分泌する内分泌系と、生態防御機構の要である免疫系は、とても密接なつながりと関係性をもっている、ということで、それぞれがバラバラにはたらいているのではない、ということです。
すなわち、心の状態、とくに感情は、免疫系のはたらきに大きな影響を与えることが、すでにわかっているのです。
たとえば、急に最愛の配偶者を失い、悲嘆にくれ、絶望的な気分になりますと、あっというまに免疫系のはたらきは低下し、生態防御の力、すなわち、免疫力が急激に落ちてしまうことがよくあります。
希望を失い、悲嘆にくれ、絶望すると、免疫力は、いっきょに落ちます。
また、つねに、いったいどうなるかわからない先が見えない不安や恐怖心をストレスとしてかかえてしまい、びくびく神経質でいると、それだけで、簡単に免疫力は落ちてしまうのです。
ということは、そういう気持ちのままでマスクをかけていて、いつもそういう恐怖や不安や心配の感情をストレスをくりかえし呼び起こし強化していると、それだけで、免疫力は低下してしまう、というわけです。
ならば、しょせん、ある程度、病人のつばきなどを、じかに受けることは防げても、しょせん、きわめて小さいウイルスがマスクの穴を通過することを阻止したり、除去したりは、所詮、無理なのですから、恐怖心や不安にかられて、神経質に、びくびくしていると、それだけで、インフルエンザにかかりやすい自分の生体内部環境をつくって、本来の免疫力のはたらきを落としてしまう、ということになるわけです。
よって、びくびくこわがって、恐怖心からマスクをいつもかけなくては、などと神経質に思っている人ほど、精神神経免疫学の立場から考えれば、まさに、びくびく恐れれば恐れるほど、流行のインフルエンザにだって、当然かかりやすくなりますよね。
すなわち、もしかすると、むやみに「こわがってマスクをする人は、かえって新型インフルエンザにかかりやすいかもしれない」というパラドックスが、論理的に考えて、筋が通っていて、正当性を強くもってくるわけです。
おわかりになりましたか?
どうせマスクをするのなら、恐怖心からではなく、たとえウイルスを防げるという科学的な根拠はなくても、どうせマスクをするのなら、これで絶対ウイルスは防げるのだ、と自信を持ってするほうがいいと思います。
という意味では、科学的ではなく、文学的、いや多分に政治的判断、ともいえるWHOのマスク奨励は、考え方によっては、暗示効果があるともいえるのです。