このブログの目的は、おもに経営者とその家族の健康管理や「命もうけ」の知恵として役立つような、眼からウロコの発想や情報を、わかりやすく伝えることにあります。
先回、きちんと科学的なエビデンス(証拠)があり、桐の箱に入れて献上してもいいくらい貴重な価値のある、がん予防の効果が確認された健康食品は何か?という問題を出しました。
何人かの方々から、メールでご意見をいただきましたが、なかなかいいセンスでお考え下さった方はいらっしゃいましたが、まことに残念ながら、正解はいらっしゃいませんでした。
お待たせいたしました!正解の発表です。
それは、えのきだけ、なめこ、ぶなしめじ、なのです!
思わず、「ウッソ〜、だって、どこのスーパーにだってある、なんでもない食用きのこじゃないの!めちゃくちゃ安くて、100gの袋で100円以下で買える。いま流行の健康食品で、アガリクス茸くらいなら一箱20000円から30000円以上するし、中には高級なものでは10万円近くするものもあって、たいへん高価だし、いかにも効きそうだけど、こんなどこにでもある超格安なきのこなんかに、そんな、がんを抑える作用があるような価値などあるわけないじゃないか!さんざん、もったいぶったあげく、人をバカにするな!そんなものが、がん予防に役立つくらいなら、医者も誰も苦労しないよ!」などという声が、聞こえてきそうですね。
無理はないですね、あまりに意外でしょうし、高級でも高価そうでもありませんから。
このことを、はっきり自らの長年の研究で、述べておられるのは、かつて国立がんセンター研究所で実験室長として抗がん剤の開発に取り組み、そのなかで、いわゆるきのこの抗癌作用について徹底的に調べた研究実績を持つ、元金沢大学教授の池川哲郎博士です。
池川先生と私は、個人的にも、たいへん親しくしており、米国やインドでの国際学会にいっしょに参加したこともありますので、ご本人から、直接、いろいろとお話をうかがっております。
池川先生は、シイタケからレンチナンという多糖体を、世界で初めて分離することに成功した研究者で、薬用・食用きのこの抗腫瘍作用についての研究では、知る人ぞ知る世界的に有名な第一人者です。2001年9月12日から14日まで、ウクライナのキエフで、世界38か国から研究者が集まって開かれた「第1回きのこと健康に関する国際学会」では、日本の代表として大会会長をつとめておられます。
米国ニューヨーク市にあるコーネル大学付属ストラングがん予防センターに腫瘍学の研究者としてディレクターをつとめる、私の友人であるウォング博士は、池川先生のことを、尊敬の念とともに「Mushroom King」と呼ぶほどです。
それほど、平たくいえば、きのこの抗がん作用の研究の実績では、池川先生の名を世界の研究者で知らない人はいません。
その池川先生が、あらゆるきのこを徹底して調べあげたところ、あまりにも手ごろで、一見なんでもないような、えのきだけ、なめこ、ぶなしめじ、という安くてあたりまえの食用きのこに、かなりはっきりしたがん予防とがん抑制作用があることが確認されたわけです。ぶなしめじは、長野産のもので、やまびこほんしめじ、という名のものがどこのスーパーでも売られています。
このことは基礎研究だけでなく、疫学的調査研究でも確認されています。
また、東京大学医学部出身の外科医で、凍結手術で有名な田中茂男博士が、自らが大腸がんになった折に、えのきだけの抗腫瘍作用についての研究を知っていたため、毎日、多量のえのきだけ熱水抽出物(ようするにえのきだけ抽出エキスであり、煮汁のこと)を徹底して飲んで、自らの大腸がんの腫瘍がしだいに見事に縮小して、消滅していく経過を、自らの体を実例とする症例として、データをそろえた明確な研究発表をされています。
どこでも非常に安価で手に入り、日常的に食生活に積極的に継続的に摂りやすいものですから、こんなにいいことはないでしょう。それも非常に強い抗腫瘍活性があるとのことですから。
これらのなにげないきのこが、いかにがん予防に役立つものであるかを考えると、高価な価値をつけて、桐の箱に入れて献上してもいいほどのものであることを、少しでも味わっていただくために、すこし学術的な表現になっているので、読みこなすのはむずかしいかもしれませんが、池川哲郎先生ご自身の専門研究者としての言葉を、以下、少々長くはなりますが、引用することにいたします。
「 1966年より、国立がんセンター研究所において、担子菌類の抗腫瘍活性についての研究が始まりました。今日では、きのこの研究は世界的に広がり、進展しています。私たちが、研究を始めた当時は、サルノコシカケ科のような硬いきのこは、癌に効くと日本では言われていました。そこで、いわゆる「宿主仲介性」抗腫瘍活性を測定するために、そのような硬いきのこを生理活性試験で試してみましたが、カワラタケやメシマコブを含めそのようなきのこには、必ずしも満足のいく結果は得られませんでした。
しかしながら、食用きのこ類から得た熱水抽出物は、サルコーマ180という固型癌に対して、癌の増殖を強く阻止する活性があることがわかったのです。制癌多糖体が多く分離されましたが、そのうち、シイタケから分離されたグルカンは、レンチナンと呼ばれ、適応は狭いながらも、日本国内の臨床で使用されてきました。
もう一つ、良く食べられている食用きのこであるエノキタケにも、高い抗腫瘍作用があります。このエノキタケから、制癌多糖体や低分子蛋白結合多糖体(EA6)が分離されました。EA6は経口投与で抗腫瘍作用があることが確認されましたが、腹腔内投与では余り効果は認められませんでした。EA6は外科手術及び他の抗癌薬との併用による経口投与によって、特に有効であることが証明されています。抗腫瘍スクリーニングテストによって、私たちは、エノキタケの菌糸体から、経口投与によってマウスの同系腫瘍に対して強い活性を示す「プロフラミン」を分離しました。長野県における疫学調査によると、一般の長野県住民より、エノキタケの栽培を主な仕事にしている農家の癌死亡率は、著しく低かったことが実証されました。さらに詳しい疫学調査は現在も行っています。
また、最もよく食用に供されている食用きのこの一つであるブナシメジの発癌予防効果の研究を行ったところ、腫瘍転移の予防効果や強い抗腫瘍活性があり、さらにブナシメジの乾燥した子実体を5パーセント含む飼料で飼育したマウスと通常の飼料で飼育したマウスを2つのグループに分けて飼育し、その後、全てのマウスに、強い発癌物資であるメチル-コランテレンを皮下注投与して、それらのマウスの発癌状況を調査しました。76週に及ぶ観察の結果、コントロール群では、36匹中21匹のマウスに腫瘍が発生しましたが、ブナシメジ配合飼料のマウス群では、36匹中3匹のみにしか腫瘍が認められませんでした。食用きのこの発癌予防と阻止の作用機序は、免疫賦活と抗酸化作用によるものである。このように、きのこの摂取は癌の予防と増殖阻止に効果があることが証明されました。
古くから東洋に伝わる伝統的医療では、医薬と食べ物は同じ起源である(医食同源または薬食同源)と言われており、きのこでも改めてその意味の重さを感じています。」
(2001年9月12日、ウクライナ、キエフでの国際学会における池川博士の基調講演要旨より)
どうですか?えのきだけ、なめこ、ぶなしめじ様様でしょう?
いかがですか、えのきだけ、なめこ、ぶなしめじをたっぷり具として入れたみそ汁や、それらを使ったいろいろ工夫した料理を、あたりまえの日常の習慣として、毎日の食事で摂られてみては?
なんといっても安いし、非常に家計も助かりますね。こんな簡単なことが、誰にでもできる超手軽で効果的ながん予防の知恵とノウハウになるんですね。
でも、世界的研究者である池川先生は、話題の健康食品、高価なアガリクス茸については、人にすすめておりません。
なぜでしょうか?
なぜなら、池川先生の徹底したきのこの抗腫瘍作用についての調査研究では、アガリクス茸には、がん抑制作用の効果が認められなかったからなのです。
「えっ!まさか!だって、がんに効果が期待できる健康食品って、巷でたいへん話題なのに!」と思いませんでしたか?そうなんです。
この続きについては、次回以降、くわしく書こうと思います。お楽しみに。
なお、池川哲郎先生が関わっている研究調査に関しては、比較的やさしい調査研究や、ご自身が書いた記事がありますので、ここにご紹介しておきます。
1.第62回日本癌学会(2003年9月、名古屋)で発表された、えのきだけ、なめこ、ぶなしめじ、という食用きのこの摂取が、胃がんの予防になる可能性を示唆する調査研究
2.「食用きのこの抗腫瘍作用」(池川哲郎、Food Style 2003年9月号、Vol.7 No. 9 )