2008年11月19日

米国史上、初の黒人大統領誕生の背景を考えてみる

米国の大統領選挙によって、バラク・オバマ氏という、米国史上、初の黒人の大統領、が誕生しました。

彼は、あの独裁者サダム・フセインと同じく、フセインというミドル・ネームなので、マスコミがいくら彼のことを持ち上げても、投票する者は、土壇場で冷静になって気が変わり、マケイン氏に変えるだろう、などともいわれていました。

ところが、本番では、圧倒的な勝利。これは、たしかに歴史的な事件です。

しかしながら、海外のどこの先進国でも、テレビの報道は、この米国大統領選のことばかりで盛り上がっていたのに、米国と関係の深いわが国、日本では、なんと大統領選挙の当日も翌日も、野球の日本シリーズの方がテレビ放映のメインで、巷の話題や関心ごとになっていたので、私は、あきれかえりましたね。大いにしらけてしまいました。

さて、世界的なヒーローになったオバマ氏。たしかに物腰の柔らかさ、ライバルを卑下するようなネガティブで辛らつな批判のやり方はできるだけ避けようとする姿勢。教会の牧師から学んだのではないか、と思えるような、人を酔わせるスピーチ。でも、見方によっては、あまりに人を酔わせるレトリックばかりが目立ちます。具体的な政治的かつ経済的な政策はないに等しい、感じさえします。

孔子がいうように、「巧言礼色、鮮し仁」ですから、言葉に酔わされるままでいたらいけません。

米国の自己主張の強い、たくましい女性たちが次々と味方になって、彼の後ろ盾や戦力になっていくところも、強い女に守られたオバマというイメージを感じさせました。

なんといっても、オバマ氏の奥さんであるミッシェル・オバマ夫人が実にパワフル。シカゴに強い基盤を持つ名士の父を持ち、頭が切れる女性弁護士。オバマ氏をカモシカにたとえるならば、その婦人は、虎のような感じ。彼女の存在が、どれだけ黒人女性の吸引力になったか、限り知れないものがあります。そこへもって、超人気のある黒人女性テレビ司会者、オプラ・ウィンフリーまでが、初の米国黒人大統領の実現に対して、支持を表明し、CNNのラリーキング・ライブという全世界200カ国以上で放映されているインタビュー番組で、オバマ支持、初の黒人大統領というアメリカン・ドリームが可能と語っていました。

また、予備選の前から、YouTubeで、オバマ・ガール(Obama Girl)という、単に軽い気持ちのパロディで作られた、オバマ氏を支持するセクシーな女性が、まるでそのキャンペーンであるかのように、曲に合わせて踊り、歌う動画配信をしたら、たちまち、数100万ものアクセスが殺到し、マスコミでも大いに騒がれることになります。

ただし、このオバマ・ガールは、勝手に支持を表明して、踊っているだけで、まったくオバマ氏の選挙運動とは無関係ですが、とにかく話題を米国で呼びました。

オバマ氏が登場したことで、一般大衆で、今まで、あまり政治に関心のなかったような人たちがいっせいに、インターネットの動画配信などを通じて、強い関心をしめしてきたことは特徴的でした。

米国民は、いつもどこかダーティーなイメージがつきまとうブッシュには、もういい加減、うんざりしている様子が顕著でした。

いつもぎりぎりの票で、不正疑惑すら感じさせる状況で、かろうじて勝ってきたブッシュ大統領の共和党の今までのやりかたが、アフガン、イラクと泥沼の戦いに入り込み、捕虜に関する証拠が不十分であったり、捕虜への拷問を正当化し容認していた、ラムズフェルドのあまりに醜く、ダーティーな戦争誘導への裏工作など、次々に明らかになり、「もうブッシュ政権だけは、いやだ!うんざりだ!」という機運が相当高まっていた様子は感じられました。

国連で発表した戦争攻撃を正当化する証拠が、実はまったくなかったことなどを知り、国民の信頼の厚いパウエルなどは、結局ブッシュ政権にいいように使われてだまされて、うんざりし、2期目はブッシュ政権から辞退してしまったほどですからね。

私の友人で、ダニエル・コビアルカという米国のバイオリニストの音楽家は、人の心を癒す音楽を作る、ふだんはおとなしい人なのですが、その彼が、私に、「こんなことをいってはいけないのだろうけど、ブッシュだけは、暗殺されてしまったほうがいい、と考えたことが何度もある。」と思わぬ告白をされて、びっくりしてしまったことがあります。

とくにいろいろ国際会議で出会った人などにも聞いてみると、とくに世界中のインテリ層、マスコミは、もうブッシュ政権にうんざりしている様子が、ひしひしと感じられました。

皆が、テロリスト、オサマ・ビン・ラディンを絶対に捕まえる、とブッシュが宣言しても、ブッシュ家自体が、もともと石油の利権に関して、ビン・ラディン家と親しい関係にあったことなど、皆、知っていますし、ブッシュの背後に石油のメジャーや軍産複合体の巨大な力があることを、けっこう知っているものです。

もうブッシュの共和党にはうんざりだから、そろそろ今度は民主党に期待をして、次は、亭主のビル・クリントンのだらしのない数々の不貞にも耐えしのび、自分が大統領になるべきチャンスをずつと待ち望んでいたヒラリー・クリントンあたりが女性大統領になって、彼女の長年の構想である社会福祉や医療健康保険制度の改革など、今までの政治経験を生かしてやってもらい、その次くらいにオバマ氏の出番が来るほうがいいのではないかと、私は思っていました。

ですが、米国民は、あきっぽいですし、ながーい目でものを考えることは非常に不得意ですから、もう、いやなブッシュから逃れたい一心で、また、不貞のだんなとともにファースト・レディーとして、今まで散々見飽きているヒラリーより、経験はなくとも、若さと勢いに乗ったオバマ氏を民主党の大統領候補に選んでしまいます。

最後には、ケネディ家までオバマ支持にまわりましたし、共和党のマケイン氏を大統領選を争っている最中に、国民の信頼の厚い黒人のコリン・パウエルが、共和党でなく、民主党のオバマ氏の支持を表明するなど、ますますオバマ氏は、アメリカンドリームを夢見る人たちのエネルギーとともに、押し上げられていきます。

将来、黒人大統領もあるかもしれない、という、一般大衆の潜在意識を感じたのは、FOXTVでシリーズで放映された、テロ組織と命がけで戦うジャック・バウアーという人物が主人公の「24 ― Twenty Four」という連続テレビドラマに、デビット・パーマーという米国史上初の黒人大統領が生まれたストーリーがありましたから、こういうドラマが当たり前に受け入れられ、人気を博している事実を見て、近い将来、現実に、黒人大統領が生まれても違和感のない時代が、もうすぐそこまで来ているような予感を感じたものでした。

どうも、その勘は正しかったようです。

米国のみならず、世界のインテリたちが興奮し、庶民層を含めた一般大衆が興奮し、若者たちがインターネットなどでも参画し、みながお祭りのように騒ぎ、興奮した大統領選挙は、かつてなかったものを感じます。

私は、個人としては、オバマ氏は親しみやすいし、志も理想を追っているようで好きなのですが、どことなく米国の大統領というよりは、大学学生委員会の委員長といったイメージの存在に感じました。

演説は上手で、口は達者なのですが、さて、実際の政治的手腕となると、やくざな北朝鮮や、したたかな中国、強硬なロシアなどに、なめられて手玉にとられてしまうのではないか、という懸念があります。国際外交は、やくざな世界ですからね。

最初は、私もオバマ氏でも悪くないんじゃないか、と考えていましたが、大統領選が近づくにつれ、一方のマケイン氏のことも調べてみたら、マケイン氏の政治家としての実力と実績は、とてもオバマ氏がかなうところではないように思えてきました。オバマ氏は、ビル・クリントンと同じく、やや八方美人です。

ジョン・マケイン氏は、べトナム戦争で、瀕死の重傷を受けただけでなく、5年間もベトナムの捕虜となり、拷問を受けたにもかかわらず、絶対に国の機密事項について口を割らなかった男です。さらに、彼の父親が海軍のえらい地位にあることもあって、彼は国の秘密をばらすことにより、彼だけ特別に釈放し、解放する取引を持ちかけられますが、断固、拒否します。彼は、とことんスジを通し、絶対に心を売らない鉄の意志と忠誠心を持っている人物のようです。

帰国して、政治家に転身してからも、彼は、友人が病気や事故で入院したようなときは、どんなに政治家として忙しくとも、まっさきに駆けつけて、励ましたという、まさに、義理人情に厚い、それゆえに、人望の厚い人物のようです。

ですから、たとえ、同じ共和党の同僚であっても、ラムズフェルドが、軍の拷問を容認していた事実がわかると、ただちに、その諮問委員会を作り、徹底して、妥協なく事実の究明に当たります。自らが、捕虜になって拷問をされた経験から、いかなる場合でも、そのような人道に反する行為は正当化してはならないと、きびしく究明しています。

また、ダーティーなブッシュのやりかたをひどくきらっていたようで、たびたびブッシュ政権のやりかたを、共和党員でありながら、きびしく非難や批判をし、共和党内で浮き上がってしまったこともたびたびあるようです。

自分が党内で立場が悪くなろうが、やるべきことをあえてやって、ごまかさず、スジを通すから、一匹狼とかいわれるわけですが、そのような姿勢を、私は非常に高く評価します。

臭いものに蓋をして、長いものにまかれて、あいまいにごまかすことができす、たとえ、自分の共和党における立場が孤立しても、人間の尊厳に関わるような、見過ごせない妥協できない要件に対しては、あえて自分にとって損になるようなことでも、スジを通して、徹底して究明する。私は、徹底してスジを通すマケイン氏の姿勢と捨て身の根性が気に入ってしまいました。なかなかの人物です。日本の政治家には、こういう骨の太いスジを通せる政治家が見当たりません。

マケイン氏は、共和党の中でノーマークで、資金もない中、自らの信念で立候補し、いつの間にか共和党の大統領候補にのぼりつめます。その不屈の信念と行動力には、これぞ、男の中の男とでもいいたくなるような感動を覚えました。

70歳を過ぎた高齢であり、オバマ氏のように、上手にインターネットを武器に器用に選挙資金を集めたり、インターネットを宣伝に活用するには、武骨すぎたような感じがしますが、私は、政治家としては、現時点では、マケイン氏のほうが、不器用でも、はるかにスケールの大きさがちがうように思われました。このことは、長年の米国通の日本人からも指摘されていました。

また、マケイン氏は、たとえ選挙の情勢で不利になろうとも、相手を卑下して攻撃するネガティブ・キャンペーンは、あえてやらない潔さとフェアーな精神を貫きました。このことも、私は高く評価します。人間としての品格が高いのだと思います。

ただし、選挙は、論理的な理性よりも、感情が勝ります。

別にマケイン氏のせいでの金融危機ではないし、ブッシュとマケイン氏は、全然違うと強調しても、人々の脳裏には、いまいましい8年間のブッシュ政権の悪夢が頭によみがえり、もうブッシュ政権の継承だけはいやだ、と感じる多くの米国民の感情は、理屈では抑えきれなかったようです。

また、初の黒人大統領の誕生というドラマに酔いたい大衆のお祭りのようなパワー、インターネットを通じての草の根的な盛り上がりも、未知数のオバマ氏を味方しました。

頭の固い共和党の連中は、選挙の敗北をマケイン氏のせいにしたりしているようですが、マケイン氏というスジのとおった、本気で国のため、国民のため尽くしてきている政治家を引退させたり、共和党のすみに追いやってしまうのは、もったいない気がします。

すでに共産主義は崩壊し、西洋文明が生んだ資本主義も、がん細胞の末期症状に入りつつあり、それがゆえの、経済学では説明できないような金融混乱と危機をひきおこしている現実を、強く認識し、まったく新しい発想が必要とされているように感じます。

それゆえに、オバマ氏は、米国民のみならず世界の人々に希望を与えるグローバル説教師としての役割だけに終始してもよいし、たとえば、仮に口だけで、彼個人の政治的能力は「中空構造」(中は空っぽ)ということであってもいいから、社会福祉の問題はヒラリーの念願だったので、ヒラリーにやらせ、たとえ、共和党であっても、その人望によりマケイン氏に、例外的に政治参謀的に側近になってもらうなど、あらゆる壁や制限を乗りこえて、真に政治的に実力のある有能な人々をスタッフにそろえ、一致団結して問題解決に新しい発想と行動をもたらしてほしいと思います。

あたかも、かつての米国の鉄鋼王アンドリュー・カーネギーについて、「自分より有能な人物をつかいこなす知恵を持つ者、ここに眠る」というようなことが刻まれた墓碑があるように、オバマ氏には、自分より、はるかに経験と能力のある人たちを上手にフルに使いこなして、多くの問題解決に着手してもらいたいと願っています。

さて、オバマ氏のいくつかのキャンペーン中の演説や、勝利が決まった直後の番に行なった勝利演説など、聞き入ってみると、その言葉のリズムとともに、何か自分までどんどん感化されて、感動がこみ上げてくるのがわかります。

まさに教会の牧師の力強い説教のような、わかりやすい言葉とその反復、さらに、しだいに増幅されてくる演説のリズムと抑揚は、あたかも「猫にママタビ」のように、一般大衆の心とつかんではなさず、聴衆は、ノリのいい音楽を聴いているかのように、酔わされてしまいますね。オバマ氏は、言葉の魔術師のようです。是非、感動のビクトリー・スピーチを下から聞いてもらいたい。英語がわからなくとも、最初のほうを音楽のように聴いていると、そのうまさが感じられるように思います。





しかしながら、初の黒人大統領誕生を屈辱的に思っている白人たちも多いようです。オバマ氏暗殺の計画の疑いで、FBIによって、すでに680件以上逮捕されているようです。

保守的で狂信的な白人中心主義者は、米国には腐るほどいます。

米国では、J.F.ケネディのような新しい変革者があらわれると、暗殺されることがあるから、心配です。ケネディは、オズワルドという青年にではなく、背後の軍事産業の意向を聞かなかったため、FBIや軍産複合体がぐるになって、ケネディを暗殺したという説には、かなり説得力があります。

私は、あの捏造と画策と陰謀に満ち溢れた、背後で軍事産業とつながっている戦争屋のラムズフェルドは、オバマ氏が勝利宣言した同じシカゴの出身ですし、かなり、オバマ氏をいまいましく思っているはずです。

平気で捕虜の拷問も正当化し、平気で隠蔽する奴ですから、おそらくあたりが動いて、非常に汚い手で、たとえば、中近東からのイスラム系の人間を雇って、オバマ氏暗殺を企て、また悪いことをイスラムのせいに見せかけて、いっきょに世論を操作し、また戦争を正当化し、戦争に誘導しようとするのではないか、と懸念します。あの男なら、やりかねませんから。ああいうみにくい白人を牢獄にぶちこめないものなんでしょうか。

オバマ氏の身にずっと何事もなく、見事、初の黒人大統領としての大任が全うされることを、切に祈ります。


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